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邦銀決算と銀行による株式保有

日本の大手金融機関は保守的だったのか、のろまだったのかはわかりませんが、証券化商品・CDO・レバレッジドローンであまり損は出していませんが(あ、新生、あおぞら、農中はのぞきますw)、取引先株式の政策投資で相当損を出してこれが一部銀行では赤字の要因になってますね。

2001年頃に銀行による株式保有を5%に制限する法律が制定されたことと、取引先株価の下落で資本を相当圧迫されている時期があり、当然経営陣から現場には株式の売却の命令が出されました。銀行を安定株主と思っていた当時の取引先経営者には、これは裏切りと取られたことでしょう。関係が悪化し、各行の売却方針の違いによりメインバンクの交代、融資シェアの激変等も一部あったやに聞いています。担当者・営業部レベルでは、最重要取引先の株については売却を拒否し、本部とのバトルに明け暮れる日々もありました。

その後日本の金融危機が峠を越した2003年だったか2004年あたりから、増資によりバランスシートに余裕ができた邦銀は重点取引先の株式保有を増やしにかかったり、アクティビストをおそれた企業経営者から買い増し要請が来たりで、銀行の株式保有に関する規律がゆるみ始めました。

そもそも銀行はなぜ取引先株式を保有したがるのか? 株主という立場になると言うことで、自らの地位を高め融資残高を増やし、融資以外の手数料モノのプロダクトを買わせるためです。現場の担当者であれば担当企業の株式をもっと銀行に買い増しさせ、自らの業績のアップにつなげたいと思うはずです。しかし、そこに資本コストや株価変動リスクというものは考慮されていません。資本コストを含めた取引の採算性はどうなのか。ここでは採算性はよろしくないということを言いたいようです。実感としてもそうだろうな、と思います。

近年では取引先企業の側から、安定株主比率向上のために銀行に株を買いましてくれ、という要請もありました。安定株主比率の向上? 何のために? 企業経営者は粛々と経営に携わり、利益を上げ、適切に株主に利益を返すか、株価を向上させるという本業中の本業に注力さえしていればいいのであって、なぜ経営者が株主構成など気にする必要があるのか。さっぱり理解できません。また銀行の側もROEや株主資本に対するリスクを無視して取引先の要請にホイホイ応じるのも問題でしょう。

それが今回の経済危機によりまたしても銀行は取引先株式のせいでバランスシートを毀損する、という自体に陥っています。銀行も本音としては、取引先の株式なんか持ちたくない。でも、よそに持って行かれると本業の銀行業務からの収入が脅かされるから消極的に保有しているという側面が大きいと思います。現在の法律では銀行による株式保有は5%までに制限していますが、日本の金融システムに対するリスクを減じるためには、自らの事業に関連のない企業の株式保有を5%ではなく一切禁じてもいいんじゃないでしょうか。

禁止すると株式需要が悪化してより一層株式市場と本邦金融システムが痛む? かつてのように日銀や機構に買い取ってもらいましょう。
by linate | 2009-02-16 22:51 | 銀行員時代


株屋ですよ。


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