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支店担当者と審査部

昔の銀行員の頃のことをお話ししてみようかと。

私のいた銀行はメガバンクの一つで、入行時の銀行の名前はもはやこの世には存在しません。銀行で働く行員にはそれぞれのカラーがあるなんて言いますが、個人的に一番端的にその銀行のカラーを示していると思っていたのが支店担当者と審査部の関係でした。簡単に言うと、ある銀行は審査部が支店に対して優位である一方で、ある銀行は支店の力が強いというものです。

企業に融資をしようとする場合、ちゃんと金が返ってくるかどうか審査、いわゆるクレジット判断をしなければなりません。この「審査」する主体は審査部だけが担うものではなく一次審査は案件の担当者自身あるいは支店自体が実施するものであり、審査部は第三者的視点から案件を再チェックする存在であると「べき論」として入行時研修で普通はたたき込まれるかと思います。企業格付や融資金額によっては審査部に上げる必要もなく、支店長のゴーサインだけで済む場合もありますが、それは審査という行為をすっ飛ばしているわけではなく、審査権が支店長にdelegateされているものであるという建前でした。

銀行によってはこの支店へのdelegateの度合いが大きく、数億円単位の案件でも支店で決裁可能な銀行もある一方で、億単位の案件はまず間違いなく審査部決裁になってしまうと言う銀行もありました。細かく言うと、都銀には同じ銀行内でも明確に支店がランク付けされていて、ランクの高い支店や本店営業部は決裁出来る金額が大きく、ランクの低い支店はちょっとした金額でも審査部決裁を必要としていました。さすがに行員が1万人以上もいて、支店が3桁も存在すると信用できない奴もいるし、能力のある行員やベテランで信頼感のある支店長は大きな支店に配属されているという判断からああいう制度になっているのでしょうか?(これに限らず都銀は性悪説に基づいているとしか思えない制度が結構存在しました)

で、本題ですがいざ案件規模が大きく、いよいよ審査部と対面する時に銀行特有のカラーが象徴的に現れている場面が出てきます。合併直後に、ある銀行出身の行員が審査部案件となった案件について支店の担当者自身が審査部に電話をかけたところ、審査役でも何でもない審査部の担当者が
「え?担当者がかけてくるの?普通課長がかけてくるもんでしょ?」
とまあ偉そうなことをぬかすので、私の知り合いマジ切れ寸前だったそうです。と斯様に、ある銀行では審査部は支店を指導してやる立場だし、支店の案件を決裁してやる立場なので、審査部は絶対でした。審査部に案件を決裁して「頂く」ために、審査部の指示は絶対だし、審査部から電話がかかってくると担当者は相当緊張したと聞きました。

一方で、またある銀行は「稼ぐ人間=営業が一番偉い。審査部なんか営業の出来ない連中の掃き溜め」という認識を持つ人がいるくらい営業優位の銀行でした。その銀行の営業担当者は案件が決裁されないなんてことはハナから想像だにしていません。支店の担当者が審査を恫喝なんてこともあったそうです。別のパターンでは審査部が決裁を渋る案件について、審査役あるいは審査担当者の先輩である支店長/部長が直接電話をかけて
「ね~、あの案件はんこ押してくれたぁ?」
と反則だろって圧力をかけることもあったとか。私はその営業優位の銀行出身なのですが、そういう審査と支店の関係性とかカルチャーがこの銀行を破綻寸前にまで追いやったんだろうと思っています。
by linate | 2007-06-15 20:50 | 銀行員時代


株屋ですよ。


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