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他人の不幸は蜜の味

私のチームで運用しているのはtraditionalな株式のアクティブファンドですので、当然にしてベンチマーク運用です。ベンチマーク運用とは相当単純に言ってしまえば:

  • ベンチマークとなるインデックスに入ってないけれどもインデックスを上回るリターンを上げる銘柄を持つ;
  • インデックスに入っている銘柄だけどインデックス平均を上回るリターンを上げそうな銘柄をインデックス内の比率(ウェイト)よりも多く持ち;そして
  • インデックスに入っている銘柄だけどインデックス平均を下回るリターンにとどまりそうな銘柄を全く持たないか、インデックス内のウェイトよりも少なく持つ

ことによりベンチマークを上回るリターンを上げることを目標とします。

昨日のカナダ市場の引け後、カナダ財務省はincome trustに対して課税を行うべく法改正を検討すると発表しました。income trustとは日本語に訳すと事業所得信託と言うそうで、income trustが産む収入に対しては法人税が課されず通常の会社形態(corporation)からincome trustへの転換も可能です。income trustの持ち分はtrust unitと呼ばれ株式と同じく取引所での売買も可能です。法人税が課されないということは株主へのリターンが増すということで、income trust銘柄は同じ業種のcorporation銘柄よりも高値で取引されていました。株主価値の最大化を図るべく、最近もcorporationからincome trustへの転換を行うと発表する会社もいくつかありました。
一方で、カナダ政府から見ればincome trustへの転換の動きが広まるにつれてそれだけ法人税収が減少してしまうことと、税の公平性の問題からincome trustを現在のまま放置してしまうことはずっと問題視されていました。課税が事業者段階ではなく投資家段階に移転するだけではないのかという話もありますが、なんだかんだで最終的な投資家はtax-exemptな年金であることが多く、事業者の段階で課税できないとやはり税収は減ってしまいます。公益企業的側面も持つ通信企業であるBCEやTelusが相次いでincome trustへの転換を発表したときにはカナダでは相当なショックを持って受け止められ結構物議をかもしていました。

さて本題に戻りますが、まだリサーチが行き届いていなかったためカナダ銘柄はバリュエーションもPMへの推奨も行っていなかったので我々のポートでは非保有でした。そこにこのニュースが出てきてincome trust銘柄もしくはincome trustへの転換を発表していた銘柄は時価総額に関係なく軒並み大きく下落したことから、インデックスのパフォーマンスを悪化させ、我々のファンドの相対的なパフォーマンスに好影響を及ぼしました。

今朝は朝起きてBloombergでカナダ銘柄が10%以上急落しているのを確認して「よっしゃ!」とガッツポーズでした。ということで積極的に勝たなくても他人が負けてくれることもうれしいというお話でした。
by linate | 2006-11-02 21:59 | 仕事


株屋ですよ。


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