村上を追いつめたもの

村上のはまった落とし穴は4000億円とも言われる肥大化したファンドサイズではないかと思っている。ファンドサイズが小さすぎれば投資対象や投資機会が限定されてしまう。逆にファンドサイズが大きすぎれば、ファンドサイズに応じてより多くの投資機会を探さねばならない。ファンドの投資家はファンドの総額の数パーセントをフィーとしてファンドマネージャーに支払っているので、ファンドサイズは大きいのにファンドマネージャーがファンドサイズを活かせず小額の投資しかしていない場合は、投資家は当然にしてファンドマネージャーに対してもっと「良い」投資機会を探して投資するようプレッシャーをかけることになる。

つまり、ファンドサイズは大きければいいというものではなくて、投資対象、運用ポリシー、ファンド運営会社の人員等に応じた適正規模というものがある。特に日本の上場企業数は高々2000社であり、さらに2000社全社の株式の100%がマーケットに流れてくる訳ではなく、すべてが割安な銘柄ではない故に、株式は為替と違って供給には限りがあるので、ファンドサイズを大きくしすぎてしまうと投資対象の選別に窮してしまうことになる。アメリカのヘッジファンドでも、いくらパフォーマンスが良好で業界内での知名度が高くても、彼らは自分のファンドの投資対象やファンドの投資担当者の人員に照らし合わせて最適なファンドサイズを把握しており、そのファンドサイズ以上の資金を集めることはしない(それゆえ、評価の高いヘッジファンドは投資家ではなくファンドマネージャーの側が投資家を選別するという行動をとっており、投資したいファンドに必ず投資できる訳ではなく、これがヘッジファンド投資の一番の難点らしい)。村上はこの原則を知らなかったんだろうか? ファンドサイズが大きければ大きいだけフィーが増えるからとできるかぎり多くの投資家を募ったんだろうか?

阪神株の大量購入はこうしたコンテクスト(とにかく投資家から集めた資金を投資しなければならない)の中から出てきた投資アイデアなのだろう。村上のようなアクティビストファンドは、いつでも売り逃げられる一方で十分経営陣にプレッシャーをかけられるだけの10%程度を持つのが通常のパターンである。しかし、今回の阪神株の場合村上は後少しで過半数の47%まで買い進めてしまった。47%もの株式をまとめて引き取ってくれるような買い手を捜すのは通常はかなり困難であり、売却時も足下を見透かされて相当のディスカウントを食らう可能性がある。もちろん市場で売却を試みようものなら需給が突然悪化して株価は大幅に下がらざるを得ない。結果的には取得価格よりも高値での売却に成功したものの、なぜ頭はいいはずの村上がずぶずぶと、それもよりによって阪神株を買いに走ったのだろうか?

ちなみに株式公開買い付けを海外でTOBと略すことはありません。takeover bidはtakeover bidです。
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by linate | 2006-06-08 22:41 | マーケット雑感


株屋ですよ。


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