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日本株PEが30倍とか40倍とか

多くの日本企業が急激な需要縮小や円高に伴って大幅な下方修正や赤字転落が予想されており、それに伴って日本株のPERが30倍以上に急激に上昇しています。欧米株のPERが10倍前後であり、これらを表層的に捉えて日本株は超割高であり、底割れ不可避という見方が某大手経済紙とかでも散見されるようになりました。私はあまりにも乱暴な見方というか、不安心理を煽り立てるだけの、全く意味のない論調だなあと思っています。実際、セルサイド・バイサイド問わず機関投資家コミュニティではPERを見て日本株は異常な割高だから日本株を売りまくれ、などという論調はほとんど見かけません。

株価の根拠となる企業利益がある一定のトレンド(成長率)の範囲内で動いている場合は、PERは非常にわかりやすく簡便なバリュエーションツールだということについては私も同意します。翻って、ここもとの企業利益の急減がトレンドかといわれれば答えは「否」でしょうし、異常値と判断すべき範疇であろうと思います。こういう環境においてPERをある単年度の企業利益に当てはめ、割安だ、割高だというのは、もはや有効な議論ではないでしょう。

さらにそもそも、個別企業のバリュエーションを行う場合、当該企業のEPSがマイナスの場合はPERは使いません。なぜなら企業価値はマイナスになることはありえず、企業価値の最小値はゼロだからです。赤字企業の場合は、PER以外の手段での企業価値の算定や割安度の判断を模索することになります。日本の個別企業の場合はPBRやDCF法が結構最近用いられているようです。

個別企業、特に複数の性質の違う事業を持つ会社を評価する際、連結ベースの利益に対して単一のPERやEV/EBITDA倍率といったバリュエーションを適用せず、事業ごとの利益に事業ごとに適切なバリュエーション指標を与え事業ごとの価値を算出し、その合計値を企業全体の本源価値とするSum of the Parts (SOTP)法という評価法があります。SOTP法でも赤字事業部門にPERやEV/EBITDAを直接当てはめてマイナス価値評価を与えるようなことはせず、保守的にゼロとするか、あるいはDCFやPBRで何らかのプラスの評価を与えます。つまり私がここで言いたいのは、個別企業のプラスマイナス入り混じったEPSの合計値であるインデックスEPSにグローバル平均の単一のPERを付す行為は、SOTP的観点から言うと一部の企業にネガティブバリューを与えている可能性が高いということです。赤字企業の数と規模は無視できない水準にある日本株インデックスにとっては、これだけで無意味な評価だといえるでしょう。実際、日経平均の適正水準がPERをベースにすると例えばざっくり3000円とするならば、じゃあ構成銘柄の個別株価はいったいどう動けばいいんだ?という話にもなろうかと思います。インデックスは所詮個別銘柄の集合体なわけですから、個別銘柄のバリュエーション指標と切り離して考えるわけにはいかないと思います。

PER以外の指標による評価を試みれば、PCFRでみた日本株は世界の指数との比較でも特に割高感はありませんし、PBRでは逆に米国株の割高感が浮き彫りになってきます(日本、欧州が1倍を切っているのに対し、米国株は2~3倍の水準)。
by linate | 2009-03-16 19:51 | マーケット雑感


株屋ですよ。


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